ロゴデザインは、フォントをちょちょいといじって完成!というものから、VIマニュアルで運用まで考えるものまで、その規模は実にピンキリです。
ただ、理念・特性・意義といった無形のものを図案化するという意味では規模の大小を問わず共通です。
この記事では、グラフィックデザイナーとして知っておくべきロゴの基本をまとめました。
ロゴの基本を知ろう!
ロゴと一言に言っても、よく見てみると、マークみたいなものがあったり、デザインされた文字があったり、文字ともマークとも言えるものがあったりと様々です。
しかし、ロゴを成立させる要素は2つしかありません。一つはイラストレーション(写真も含む)、もう一つはタイポグラフィ(文字)です。
イラストレーションはイメージを伝える役目を、タイポグラフィはメッセージを伝える役目を果たします。この2つの要素が、目的に合わせてバランスよく組み合わさったものが総称としてのロゴと言えます。
このことを頭に置いて、まずはロゴを構成するパーツ等の名称から学びましょう。
ロゴタイプ・社名ロゴタイプ
【構成要素:タイポグラフィ】
ブランド名や商品名、社名など「デザインされた文字」のことをさします。
ロゴタイプは、まずは形が魅力的であること、次に認識し易いことが要求されます。会社やブランドの特性や業種などを表現されたデザインであるべきですが、読みやすさを損ねてまでデザインを優先させる必要はありません。その役割はシンボルマークが担うべきです。
シンボルマーク・マーク・トレードマーク
【構成要素:基本はイラストレーション。タイポグラフィが使われることもある】
会社、団体、個人、サービス、ブランドなどを象徴した図形です。日本の家紋もシンボルマークと言えます。
シンボルマークはロゴタイプよりも自由度の高いデザインが可能ですので、抽象的な表現も多く見られます。おもに図形を使用するので、より記憶に残りやすいという特徴があり、シンボルとしての世界観を伝えやすく、企業やブランドの持つイメージ・印象などの「顔を覚えてもらうこと」を優先する場合は、シンボルマークが必要です。
あまりに凝ったデザインは逆に印象に残りづらいので、とくに長く使われる企業のマークなどは、シンプルな造形であることが重要です。
シンボルロゴタイプ
【構成要素:イラストレーションとタイポグラフィ】
この呼び方はあまり一般的ではないかもしれませんが、ロゴタイプのデザイン要素を強くしてシンボルマーク的な使い方をする場合にこう呼ばれることがあります。正確に言えば「ロゴタイプ」ですが、シンボルマーク的な使い方もできるのでロゴタイプとシンボルマークの中間的な存在といえます。
ロゴマーク
ロゴタイプとシンボルマークを組み合わせて図案化したもののことをロゴマークと言います。
シンボルロゴタイプはロゴタイプとシンボルマークの要素を持つので、単体でロゴマークとされることもあります。
ちなみに「ロゴマーク」は和製英語で海外では通用しません。英語圏でのロゴマークは、単にマークだけを指し示し、英語のロゴ(logo)はlogotypeとlogomarkを合わせたものを指します。ややこしいですね。
ロゴ
「ロゴ」という呼び方は、本来は「ロゴタイプ」の略称でした。現在の「ロゴ」は、ロゴタイプとシンボルマークの組み合わせである「ロゴマーク」の略称として使われたり、マークだのタイプだのすべてをひっくるめた総称として使われています。
なんのためのロゴ制作なのかを理解しよう!
ロゴは、それを見た人が、企業・ショップ・ブランド等のイメージを印象的に受け取れるものでなくてはなりません。ということは、ロゴデザインとは、企業・ショップ・ブランド等のイメージを図案化する作業といえます。なので、どのようなロゴであっても、元となるものの意味を理解していなければ、カタチにすることは不可能といえます。
企業ロゴ
企業の顔である企業ロゴは、理念・方針・ビジョン等を図案化したものです。なので、もちろんそれらを理解していないとカタチにはできません。もし理念・方針・ビジョン等がない、もしくは曖昧な企業であれば、それらを整理して確定させる作業が必要です。
できれば担当者ではなく、経営者または経営幹部にしっかりとヒアリングを行い、コミュニケーションを取り、元となる企業コンセプトやビジョンを共有することが重要です。そして、それらを図案として表現できているか?という目線でのブラッシュアップを重ねる必要があります。
ブランドロゴ
企業ロゴは永続的に使われることが多いので、流行に左右されない普遍的でおとなし目のデザインが好まれますが、ブランドロゴは、その製品・サービスを表現した、より特徴のあるデザインとなり、イメージ戦略にも使われます。
いずれの場合も、どのような媒体でもイメージの統一が図れるよう、VIマニュアルで管理されることが理想です。
ロゴ作成にはルールがあるのだ!
やっと具体的なテクニックの話です。ロゴ作りは、シンプルなようで様々な要素が絡みます。カタチ・色・文字のデザインセオリーを普段よりもさらに高めて制作する必要があり、さらにロゴ独自のセオリーが必要となります。
できあがりはシンプルに見えるかもしれませんが、ロゴにはあらゆるテクニックが詰まっているのです。
カタチと色に意味を持たせる
ロゴは、理念・特性・意義・コンセプトといった無形のものを図案化する作業なので、その造形に意味が必要です。
例えば、業界の常識を覆すような鮮烈な戦略を得意とする企業であれば、ロゴの造形は「常識に捕らわれない」「鮮烈」を表現する変わったカタチ、過激なラインで。地域に根づいてゆっくりと成長していく企業であれば、安定感のあるカタチ、緩やかなラインを多用します。こうした線の曲がり方や角度、エレメントのカタチ、そして色など、ロゴを構成する様々な要素に意味を持たせる必要があります。
と言っても難しく考える必要はありません。ヒアリングしながら言葉を落書きみたいに図にしてみてください。それがデザインのヒントになっていきます。
曖昧さをとことん無くす
重なっているのか、離れているのか。揃っているのか、ズレているのか。デザインに曖昧さは禁物ですが、とくにロゴデザインにおいては、「曖昧」をとことん排除する必要があります。(「不安定」などを表現するために、狙って曖昧にする場合は別ですが。)
曖昧さはロゴの完成度を下げ、安っぽさにもつながります。
あらゆる大きさを想定する
ロゴは看板のように大きな使われ方をしたり、名刺のように小さく扱うこともありますので、あらゆる大きさで使われることを考慮してデザインする必要があります。どの大きさでも印象が変わらないデザインが理想的です。
とくに気にしなければいけないのは小さく扱われる時です。細い線や狭い空きは、小さく扱う時に再現できなくなることがあるので注意が必要です。
ロゴタイプは文字の基本に帰れ
ロゴタイプは企業やブランドを文字で表現するので、文字が持つ特性を理解していることが肝心です。以前の記事『デザインの話「書体-欧文編」』『デザインの話「書体-和文編」』で、文字が持つ特徴を説明しています。
欧文では、セリフ体・サンセリフ体の特徴や「エックスハイト」「カウンター」で、どのように印象が変わるのか?
和文では、明朝体・ゴシック体の特徴や「字面」「骨格」「フトコロ」で、どのように印象が変わるのか?
ロゴタイプ作成する時は記事を読み返してみてください。
大きさと空きにとことんこだわる
とくに会社の顔となる企業ロゴは、少しの隙があってもいけません。エレメント同士の大きさや空きのバランス、すべてを究極にまで突き詰める必要があります。
遠目で見た時にバランスの悪いところはないか?変な空き、窮屈さを感じるところはないか?思いっきり拡大してみて、揃えるべきラインや太さ・空きは完璧に揃っているか?斜めのラインはすべて同じ角度になっているか?などなど、マクロ的な目線とミクロ的な目線を駆使して、「見た目」のあらゆるチェックを行い、完璧な造形を目指します。
VIマニュアルを作ろう!
「ロゴの取り決め=CI」と認識されていることもよくあるのですが、CIとは、コーポレート・アイデンティティの略称です。
コーポレートのアイデンティティなので、本来の意味では、企業が掲げてきた理念や事業内容、CSR等に基づいて自らの存在価値を体系的に整理し、改めて定めた理念や行動指針を企業内外で共有することでより良い企業活動を行っていこうとするもの。またそれを実施するための計画。……なのです(Wikipediaより)。
CI計画では、企業を象徴するマークやロゴを策定することが多いので、CIを定めることは「ロゴを新しく作ること」のように扱われることがあります。しかし本当は、「企業文化を高めて、お客様や関係者・取引企業・社会とよりよい関係を築くこと」が目的なのです。
定めらた理念は、「コーポレート・ステートメント」「コーポレート・スローガン」「コーポレート・メッセージ」として、親しみやすい言葉に変換され、ロゴといっしょに様々なコミュニケーションで使われます。
このようにメッセージとロゴは様々な媒体で、様々なコミュニケーションに使われますが、ロゴが持っているイメージ、マークやロゴタイプに込められた意味、それらを壊さないようにするために、ロゴの使い方が定められたものが「VI(ビジュアル・アンデンティティ)マニュアル」となるのです。
CIの一部であるロゴやVIマニュアルがごっちゃになって、「CIマニュアル」という呼ばれ方をしたり、CI=ロゴの取説みたいな印象となっているのです。
では、ロゴのVIマニュアルにはどんなことが記載されているでしょう。
基本デザイン要素
ロゴの造形、色が記されています。VIマニュアルの中で最も重要な視覚的要素が記されます。
色については様々な媒体でイメージが視覚的統一を図るために、DIC・PANTONE・プロセス4C・RGB・Lab等、さままざまな表現法・カラーチャートで記されます。またロゴ以外に指定書体も設定されます。
基本デザインシステム
ロゴとコピーの組み合わせ、サブグラフィックの解説、背景色の限界値、アイソレーションエリア、住所等の組み合わせ方など、ロゴの使い方について記されます。
使用禁止例
比率・太さ・デザイン等の変更、他のデザイン要素付加、文字間の変更、角度の変更、フチの追加等々、想定される様々な使用禁止令を挙げておきます。
アプリケーションデザインシステム
名刺、封筒、書類、帳票類の雛形、社章、制服、ジャンパー、車輌、サインなど、ロゴが展開される媒体ごとに仕様規定を設定します。
再現用データ
ロゴ、カラーを再現するために必要なデータ類のまとめです。
フォローシステム
CI、VIマニュアルの運用方法、管理方法が記されます。
企業によって違いますが、VIマニュアルにはこうした内容が記載されています。
このように一言でVIマニュアルと言っても、様々な取り決めが必要です。ただし、これらはすべてを決めないといけないわけではないので、目的・予算・運用方法等に合わせての調整が必要です。
いかがでしたでしょうか?
最近では、ロゴ制作はWEBの作成サービスやAIでできてしまいますが、ロゴは長い間企業・店舗・ブランド等の顔として使われるものです。細かいところにまでこだわって作り込むなら、今はまだAIより人間の手仕事が勝っていると言えます。
というわけで、ロゴ制作は半田中央印刷にご用命ください!